ぼろぼろな駝鳥
高村 光太郎
何が
面白
(
おもしろ
)
くて
駝鳥
(
だちょう
)
を
飼
(
か
)
うのだ。
動物園の四
坪
(
つぼ
)
半のぬかるみの中では、
脚
(
あし
)
が大
股
(
また
)
過ぎる
ぢ
(
じ
)
ゃないか。
頚
(
くび
)
があんまり長過ぎる
ぢ
(
じ
)
ゃないか。
雪の降る国にこれでは羽がぼろぼろ過ぎる
ぢ
(
じ
)
ゃないか。
腹がへるから
堅
(
かた
)
パンも
喰ふ
(
くう
)
だ
ら
(
ろ
)
うが、
駝鳥
(
だちょう
)
の眼は遠くばかり見て
ゐ
(
い
)
る
ぢ
(
じ
)
ゃないか。
身も世もない様に燃えて
ゐ
(
い
)
る
ぢ
(
じ
)
ゃないか。
瑠璃
(
るり
)
色の風が今にも吹いて来るのを待ちかま
へ
(
え
)
て
ゐ
(
い
)
る
ぢ
(
じ
)
ゃないか。
あの小さな
素朴
(
そぼく
)
な頭が無辺大の夢で
逆
(
さか
)
まいて
ゐ
(
い
)
る
ぢ
(
じ
)
ゃないか。
これはもう
駝鳥
(
だちょう
)
ぢ
(
じ
)
ゃない
ぢ
(
じ
)
ゃないか。
人間よ、
もう止せ、こんな事は。
出典:青空文庫(
https://www.aozora.gr.jp/cards/001168/files/56694_55474.html
)
青空文庫の奥付
底本:「近代詩の鑑賞」さ・え・ら書房
1958(昭和33)年3月20日第1刷発行
1971(昭和46)年4月10日第2刷発行
入力:倉本理恵
校正:Juki
※底本は新字旧仮名づかいです。なお拗音の小書きは、底本通りです。
※新仮名によると思われるルビの拗音は、小書きしました。
※表題は底本では、「ぼろぼろな
駝鳥
(
だちょう
)
」となっています。
2014年12月27日作成
青空文庫作成ファイル:
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