手紙
竹内 浩三
午前三時の時計をきいた。
午前四時の時計をきいた。
まっくらな天井へ向けた二つの眼を
しばしば
させていた。
やがて、東があかるんできた。シイツが白々しくなってきた。
にこりともせず、ふとんを出た。タバコに火をつけて、机に向かった。手紙を書いてみたかった。出す相手もなかった。でも書いた。それは、裏切った恋人へであった。出さないのにきまっているのに、ながながと書いた。書きあげれば、破いて棄てるのだけれど、息はずませて書きつづけた。
出典:青空文庫(
https://www.aozora.gr.jp/cards/001675/files/54792_54781.html
)
青空文庫の奥付
底本:「竹内浩三全作品集 日本が見えない 全1巻」藤原書店
2001(平成13)年11月30日初版第1刷発行
2002(平成14)年8月30日初版第5刷発行
入力:坂本真一
校正:雪森
2014年10月13日作成
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