玉盃の曲
漢那 浪笛
ふくよかの
顔面
(
おもざし
)
あげて
紅潮の浜にさすごと
華
(
はな
)
やかの笑みひろごりて
まなざしの光すゞしく
わが胸の奥には深く
よろこびの影こそ跳れ
わが耳に
絃
(
かな
)
づる歌は
鶯の啼く音をこめね
あたたかき玉の
腕
(
かひな
)
に
瑠璃色の
酒瓶
(
もたい
)
たたけば
白百合の花よりすべる
露のごと湧くや
甘酒
(
うまざけ
)
玉盃の
縁
(
ふち
)
にあふれて
白銀や黄金の花の
そこゐには咲きそむものと
口ごもる若き恋人
手をのべて盃をうくれば
わが心
天
(
あめ
)
の
永久春
(
とこはる
)
美しき
追憶
(
おもひで
)
ばかり
絃
(
いと
)
かけぬ心をゆする
新たなる
生命
(
いのち
)
の花の
色馨る唇よせて
玉盃の
縁
(
ふち
)
にあつれば
われならぬ影こそ
映
(
うつ
)
れ
なめらかな
うまら
の酒を
喉笛
(
のどぶえ
)
にそとすべらせば
血の浪の
生々
(
いき〳〵
)
ゆらぎ
天地に吾が脈かよふ
出典:青空文庫(
https://www.aozora.gr.jp/cards/001666/files/54536_59470.html
)
青空文庫の奥付
底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩
」国書刊行会
1991(平成3)年6月6日第1刷
初出:「芸苑 第二巻第二号」
1907(明治40)年2月
※初出時の表題は「玉盃曲」の一篇です。
入力:坂本真一
校正:良本典代
2016年6月10日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、
青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)
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