しやうりの歌
末吉 安持
闇の幕危く垂れて
二十八宿
星座
(
せいざ
)
揺
(
ゆる
)
ぎ
滅亡
(
ほろび
)
の
香
(
にほひ
)
凄
(
すご
)
う乱るゝ
古寺
(
ふるでら
)
の
屋根
(
やね
)
に
嬉
(
うれ
)
しや
白鵠
(
びやくかう
)
の夢は
醒
(
さ
)
めたり、
あな嬉し
霊
(
れい
)
の
御告
(
おんつげ
)
、
白鵠
(
びやくかう
)
は夢より醒めぬ
頼
(
たのも
)
しく
威
(
い
)
ある瞳に
喙
(
くちばし
)
の
結
(
むす
)
びたゞしく
みがまへて
睨
(
にら
)
むか闇を、
平和
(
へいわ
)
の
気温
(
けぬる
)
く
密
(
みつ
)
なる
巣
(
す
)
の
真隅
(
ますみ
)
、
を
吐
(
は
)
いて
金鱗
(
こんりん
)
の
閃
(
ひらめ
)
き
寒
(
さむ
)
う
蜿
(
うね
)
りたる
地獄
(
よみ
)
の
私生児
(
みそかご
)
うとましの
怪物
(
けもの
)
、
鎌首
(
かまくび
)
巣の
雛
(
ひな
)
の
機
(
き
)
を
窺
(
うかが
)
ひて
倚
(
よ
)
り
打
(
う
)
たむ
危
(
あやう
)
の
刹那
(
せつな
)
、
星明
(
ほしあか
)
り白く乱れて
一
叫
(
さけ
)
び闇を裂きしか
虚空
(
そら
)
高く
霊
(
れい
)
の羽ばたき
劫運の
恐怖
(
おそれ
)
の
帳
(
とばり
)
曙の
神矢
(
かんや
)
に
落
(
おち
)
ちて
生命
(
いのち
)
の気
漲
(
みな
)
ぎる
朝
(
あした
)
白銀
(
びやくぎん
)
の
翅
(
つばさ
)
ゆるかに
天がける
霊鳥
(
れいてう
)
見ずや、
鎌首
(
かまくび
)
はかぼそくしびれ
大権威
(
たいごんい
)
、
朝
(
あさ
)
の
光明
(
ひかり
)
に
褪
(
あ
)
せはてし
鱗
(
うろこ
)
を
晒
(
さら
)
し
雛鳥に
眼
(
め
)
を
啄
(
つゝ
)
かれて
儚
(
はか
)
なげの
息
(
いき
)
絶えざまや、
あら仰げ勝利の
霊
(
たま
)
は
白金
(
しろがね
)
の
翅
(
つばさ
)
気高
(
けたか
)
う
子等
(
こら
)
連
(
つれ
)
て
朝明
(
あさあけ
)
くゆる
大空
(
おほぞら
)
の「
栄光
(
はえ
)
」が
招
(
せう
)
〴〵に
悠
(
ゆるや
)
かに
群
(
む
)
れとび去りぬ。
出典:青空文庫(
https://www.aozora.gr.jp/cards/001607/files/54511_64965.html
)
青空文庫の奥付
底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩
」国書刊行会
1991(平成3)年6月6日第1刷
入力:坂本真一
校正:フクポー
2018年5月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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