かさぬ宿
末吉 安持
五
里
(
り
)
の
青野
(
あをの
)
に行き暮れて、
山下街
(
やましたまち
)
の
片門
(
かたかど
)
に、
いかで
一夜
(
ひとよ
)
の
宿
(
やど
)
乞ふと
都
(
みやこ
)
のなまり、――うらわかき
学生
(
がくせい
)
づれの
七人
(
しちにん
)
は
手にこそしたれ、百合の花。
家の
下部
(
しもべ
)
が、
老
(
お
)
い
屈
(
かゞ
)
み、
嗄
(
しはが
)
れごゑに、
竹箒
(
たけばうき
)
とる手とどめて物いへば、
二室
(
ふたま
)
へだてし
簾障子
(
すしやうじ
)
の
奥に
乳母
(
うば
)
よぶ――こは人の
百合の花なる白き影。
親なき君をいつく
家
(
や
)
の
あなあやにくと、しとやかに
乳母はいなみぬ。よし、さらば、
そのあえかなる君祝ひ
捧ぐと
與
(
あた
)
へ行き過ぎぬ、
七人
(
しちにん
)
の手の百合の花。
出典:青空文庫(
https://www.aozora.gr.jp/cards/001607/files/54503_66733.html
)
青空文庫の奥付
底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩
」国書刊行会
1991(平成3)年6月6日第1刷
入力:坂本真一
校正:フクポー
2018年12月24日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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