ちちのみの父を負ふもの、
ひとのみの肉と骨とを負ふもの、
ああ、なんぢの精氣をもて、
この師走
ゆくゆく靈魚を獲んとはするか、
みよ水底にひそめるものら、
その瞳はひらかれ、
そのいろこは凍り、
しきりに靈徳の孝子を待てるにより、
きみはゆくゆく涙をながし、
そのあつき氷を蹈み、
そのあつき氷を喰み、
そのあつき氷をやぶらんとして、
いたみ
ゆくゆくちちのみの骨を負へるもの、
光る銀緑の魚を抱きて合掌し、
夜あけんとする故郷に、
あらゆるものを血まみれとする。
――十一月作――
青空文庫の奥付