怪談会 序
泉 鏡花
序
傳
(
つた
)
ふる
處
(
ところ
)
の
怪異
(
くわいい
)
の
書
(
しよ
)
、
多
(
おほ
)
くは
徳育
(
とくいく
)
のために、
訓戒
(
くんかい
)
のために、
寓意
(
ぐうい
)
を
談
(
だん
)
じて、
勸懲
(
くわんちやう
)
の
資
(
し
)
となすに
過
(
す
)
ぎず。
蓋
(
けだ
)
し
教
(
をしへ
)
のために、
彼
(
か
)
の
鬼神
(
きしん
)
を
煩
(
わづ
)
らはすもの
也
(
なり
)
。
人意
(
じんい
)
焉
(
いづくん
)
ぞ
鬼神
(
きしん
)
の
好惡
(
かうを
)
を
察
(
さつ
)
し
得
(
え
)
むや。
察
(
さつ
)
せずして
是
(
これ
)
を
謂
(
い
)
ふ、いづれも
世道
(
せだう
)
に
執着
(
しうぢやく
)
して、
其
(
そ
)
の
眞相
(
しんさう
)
を
過
(
あやま
)
つなり。
聞
(
き
)
く、
爰
(
こゝ
)
に
記
(
しる
)
すものは
皆
(
みな
)
事實
(
じじつ
)
なりと。
讀
(
よ
)
む
人
(
ひと
)
、
其
(
そ
)
の
走
(
はし
)
るもの
汽車
(
きしや
)
に
似
(
に
)
ず、
飛
(
と
)
ぶもの
鳥
(
とり
)
に
似
(
に
)
ず、
泳
(
およ
)
ぐもの
魚
(
うを
)
に
似
(
に
)
ず、
美
(
び
)
なるもの
世
(
よ
)
の
廂髮
(
ひさしがみ
)
に
似
(
に
)
ざる
故
(
ゆゑ
)
を
以
(
も
)
て、ちくらが
沖
(
をき
)
となす
勿
(
なか
)
れ。
泉 鏡花
出典:青空文庫(
https://www.aozora.gr.jp/cards/000050/files/47336_28597.html
)
青空文庫の奥付
底本:「文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会」ちくま文庫、筑摩書房
2007(平成19)年7月10日第1刷発行
底本の親本:「怪談会」柏舎書楼
1909(明治42)年発行
※底本の「序」に「怪談会」を補って、「怪談会 序」を作品名としました。
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2007年11月19日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、
青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)
で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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