ゐろりの中に街がある、
かすかな足音きこえてる。
ランプがともり、靄がある、
庭の木などに壁などに。
靄のなかから火がもえて
てらし出される部屋がある。
屋根やご本も見えてゐる。
みんな真赤にてらされる。
ゐろりの中の街中の、
塔の下かげ行く兵士。
けれど私が見てるうち、
兵士も光も消えてつた。
かうと再び火がもえる。
ふたたび街をてらしだす。
ほうらこんどは谷もある。
ほうら兵士が又見える。
もえてる
どこまで行くの、聞せてよ。
ゐろりのなかの此の街は、
これは何なの、きかせてよ。
青空文庫の奥付